首都大学東京で准教授をつとめる西島央先生と、若き能楽師・武田祥照氏が企画した、「すろうあーとすとーりー」というイベントに寄せて、第一回目のテーマである「鵺」という筆文字を私がお手伝いしました。
彼らの作った企画書には、こんな一文がありました。「藝術は特別な時に特別な場所で“拝観・拝聴”するものではなく、本来、私たちの生活に寄り添ってふだんの時にふだんの場所で、見逃しがちな美しいものや心の奥底にしまわれている感情に気付かせてくれるものです。」
まさに私の書に対する気持ちと同じものだったので、そんな堅苦しいイメージを離れて、もっといろんな芸術を気軽に楽しむ場所を作りたい、という彼らの主旨に大いに触発されての一文字でした。同じ「鵺」でも、いろんな文字があることをお客さまに伝えたい、というリクエストに応えて、様々なイメージの「鵺」を書いてみました。
当日のイベントでは、武田氏の能楽と、声楽家・河野陽介氏のコラボレーションが予想以上に面白く、まだまだ試行錯誤ながらも、これからの展開を大いに期待させられたひと時でした。
(発起人/西島央、武田祥照)